窓のメーカーYKK APの展示会に合わせて、盛りだくさんの建築巡り。タイトなスケジュールでしたが、食事や見学をしながら建物の居心地を感じられる、学びの多い時間となりました。
「花重リノベーション 2023 設計:MARU。 architecture 高野洋平・森田祥子」
谷中霊園にある花屋+カフェ。
リノベーションした戦前の建物と立体的な屋外デッキで構成されて、歩道まわりには多様な植物が共存している。時間が蓄積した柱梁の表情、床のモルタル、吹抜けからの光、特注のテーブルと花器に目が行く。屋外デッキは、立体的なフレームに階段とスラブが組み込まれて、スキップフロアのように展開。フレームの柱梁はエイジングされて、木造の柱梁とシンクロしている。内外問わず多くの座席が用意されていて、訪れる人が選べるような楽しさもある。
「ブルーボトル豊洲 2024 設計:スキーマ建築計画 長坂常」
公園の広場にあるカフェ。
木造現しの空間にレンガを取り込んだ柔らかい色彩。広場とつながる屋根下空間が心地よい。外壁の上部は遠くから見ると和紙のような質感で、行灯のようにも見える。後ろのビルは都会ならではの風景、芝生広場の中に木造建築が合っている。
「とらや 銀座 2024 設計:内藤廣」
銀座のビル4階にある和菓子店。
店内は薄暗く、黒を基本とした落ち着いた色彩。屋外デッキは、三方を壁に囲われた空間で、平面的には大きくはないが、2層分の階高があるため開放感がある。壁の瓦タイル、松、水盤、鉄骨階段の存在感により、外に抜けそうな視線の動きが一旦止まる。アイストップの効果も相まって、静寂な空間になっているように思う。ゆっくりとした時間が流れる感覚を覚える。
花重は既存改修と増築、ブルーボトル豊洲は新築、とらや銀座は内装改修。建築のアプローチに違いはあるが、コーポレートカラーに加えて、設計者の意志が強く表現されているように思える。特に、花重のように既存にあるものを解体せずに、環境をアップデートしていく方法は重要な事だと感じる。古いものを解体してしまえば、時代は分断される。古いものを現代の規定に合わせることは並大抵ではないが、新旧の時代を繋げていくような設計は、時間の蓄積が読み取れる。一方、とらや銀座は、静寂な空間の中で居心地の良いゆっくりした時間を味わえる。これもまた、建築がつくる時間体験である。建築と時間の関係は、この建物巡りにも通じる部分があったように思える。
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